口ゲンカなんて、割りとしょっちゅうだし。

そもそも、いつも発端はなんだったのかなんて・・・忘れてしまうくらい些細なコトばかり。




その時も、僕とアスナさんは・・・このかさんや刹那さんが、生暖かい目で見守ってしまうほど
他愛のない口ゲンカをしてしまって。

やっぱり、口論の始まりはなんだったのかなんて、思い出せないほどだったのに。





当の昔に言われ慣れてるはずのアスナさんのヒトコトが・・・何故か、ひどく胸に突き刺さった。












「何よ!ガキンチョ!!アンタが来てから、ホント、メーワクなコトばっかだわ!」















                  月 灯 り

















アスナさんの口が悪いのは、今始まったことじゃない。

そんなコトは分かってるし・・・なんだかんだ言いながらも、アスナさんが本当はとても優しくて、
すっごくいい人なのも、分かってる。



だから、あの言葉は・・・アスナさんの本心から出た言葉では・・・ないのかもしれない。






そう思うのに。思いたいのに。






心の奥底のどこかで・・・拭いきれない、不安。












「・・・・・僕、どうしちゃったんだろう・・・。」








ため息と共に零れ落ちた言葉は、偽らざる僕の本音。









居た堪れなくなって部屋を飛び出したまではよかったけど、結局行く宛などあるはすがなくて。
女子寮から少しはなれた所にある大きな木の根元に、そっと腰を下ろす。





そっと見上げた視界に映るのは・・・仄かに青白い光を放つ、まぁるい・・・まぁるい、お月さま。



ウェールズから見える月と、あんまり変わらないな・・・。



星はあんまり見えないけど。












また一つ、無意識のうちにため息が洩れる。












「・・・・・早く大人に・・・なりたいな・・・。」














ポツリと呟いた言葉が、自分の耳に届いた時にやっと、僕はその意味を理解する。







僕がもっと大人ならば。

アスナさんも・・・僕のコトを子供扱いしないで、ちゃんと見てくれるかもしれないのに。







そんな想いが、ふとボクの脳裏をよぎる。






「うわっ・・・ぼ、僕、何を考えてるんだろう・・・。」






冷たい夜風に晒された頬が、かぁーっと熱を帯びていくのを感じる。
ドクンドクンと、高鳴る鼓動の音が、うるさいくらいに耳について。






タカミチまでとは言わない。

でも・・・せめて僕が、アスナさんと同い年だったなら。

もしかしたら、アスナさんも、僕のコトを子供扱いしないでくれるかもしれない。



そして何よりも。



アスナさんを・・・危険な目に合わせずにいられたかもしれない。







迷惑をかけてばかりの子供の僕を、子供嫌いのアスナさんが疎ましく思わないわけがないよ・・・。







今更ながらに、僕は自分の幼稚さや非力さが悔しくて。




今すぐ大人になりたい。
今すぐ力がほしい。




大切なモノを・・・大好きなヒトを、傷つけないで、護り通すだけの力を。









でも、それは・・・叶わぬ願い。








どれだけ僕が頑張っても、アスナさんと僕の間の残酷な時の隔たりが、埋まることはなくて。
僕が重ねた年月の分、アスナさんも同じように時を刻んでいく。






いつまで経っても、僕は・・・アスナさんより年下のままなんだ・・・。







当り前のはずのその事実が、僕の心に重くのしかかる。








でも、だからこそ。








少しでも・・・強くならなきゃ。

追いつけないことを、嘆いてばかりいても仕方ない。


こればかりは、どれだけ頑張っても、願っても・・・どうしようもないことなのだから。



そんな時間があるなら、少しでも強くなれるように修行した方がいい。







「・・・・・よしっ、頑張るぞ。」

もう誰も、傷つくことがないように。








そう思い直して、杖を握る手にぎゅっと力を込める。









「・・・・何を頑張るのよ。」









意を決して、勢いよく立ち上がった僕の耳に、聞きなれた・・・どこかぶっきらぼうな声が届く。






「・・・・・ア、アスナさん?!」








思いもよらない突然の遭遇に、どこか上ずった声でその名を呼ぶのが精一杯で。



いつからそこに、いたんだろう・・・。


アスナさんは、僕が凭れていた木の後ろからひょっこりと姿を現した。






「ど、ど・・・どうしてココにいるんですか?!・・・あ、別にいて悪いわけじゃないんですけどっ・・・!」





突然の出来事に、軽いパニック状態なのか、自分で何をいっているのかよく分からなくなって。
わたわたと忙しなく動かしてしまう手と正比例するように、呂律も上手く回らない。


予想外のハプニングは、嬉しいような・・・でも、どこか気まずいような、不思議な感覚に襲われて、身体から
イヤな汗が流れてくるのが分かる。






・・・・うわ〜・・・やっぱり不機嫌だぁ、アスナさん・・・。






目の前で腕を組んだまま、仏頂面のアスナさんは、そんな僕の様子を無言のまま、ただ見つめていて。


反応がないままのアスナさんに、次はどんな言葉をかければいいのか、頭の中で必死に検索してみても、
僕が三週間で覚えた日本語のボキャブラリーでは、適当な言葉が全く思い浮かばない。






その時、仏頂面のアスナさんが、ゆっくりと・・・ゆっくりと、僕に向かって近づいてきた。





「わー!!ご、ごめんなさいっ!!」







まるで条件反射のように、僕は固く目を瞑り、頭を手で覆いながら、謝罪の言葉を口にする。









ふわり。









あたたかい感触と、柔らかな匂い。




それは・・・アスナさんのベッドにもぐりこんだ時の感覚と、よく似ていて。






「・・・・え?」







てっきり怒られるか、叩かれると思っていた僕は、予想外の展開におそるおそる、目を開けてみる。












「勝手にいなくなるんじゃないわよ、バカネギ。」












耳元で小さく響くアスナさんの声が、微かに震えている。
かすかに触れ合う頬が、心なしかひんやりと冷たくて。





―――――もしかして、探してくれてた・・・?







「ごめんなさい、アスナさん・・・。」






大好きな温もりに包まれて、僕は思わずその背に手を伸ばす。
さっきまでの不安も、焦りも・・・僕の心の中の蟠りが、そのまま昇華していくような感覚。




僕はアスナさんの担任なんだから、もっとしっかりしなくちゃいけないのに。




そう思いながらも、更に深い心の底で、このまま時間が止まったらいいのに・・・なんて思っている僕が
いるのも、否定できなくて。










「・・・さぁ、帰ろう。このかも刹那さんも・・・心配してるよ。」










少しだけ離れて、僕に視線を合わせるように屈んだアスナさんの柔らかな手が、僕の髪をくしゃりと撫でる。








「・・・・・はい。」





少し残念で、名残惜しい気持ちを噛み下して。

精一杯の笑顔でそう応えたら、アスナさんもにっこりと微笑み返してくれた。












どちらからともなく繋がれた手の温もりが、ただ・・・嬉しくて。












寮へと戻る僕たちの背中を、さっきと変わらないお月さまが、仄かに煌きながら、そっと見守っていた。
























初ネギま小説が、こんなんでいいのでしょうか。(^^;

ネギもアスナも、互いに互いが大切で、心配で、大好きなのに
それが恋だと気づかない関係が、夜神的には萌えです。

でも心の底では何となく繋がってる・・・みたいな。(笑)


こんな話がボチボチ増えると思います。
よろしければご感想など頂けると嬉しいです。





ブラウザを閉じてお戻りください。



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送