今までずっと、私には・・・たった一つの道しかなかった。 その道に、抗うことも。 その道を、疑うことも。 私には・・・有り得ない事・・・そう、思っていたのに。 ―――――私は、どうしたら・・・いいんだろう。 ゆるぎないものひとつ 「刹那さん・・・?刹那さん、どうかしましたか?」 遠慮がちにかけられたネギ先生の声に、ふと我に返る。 「あ、いえ・・・何でもないです」 「そう、ですか?あんまり顔色がよくないみたいですけど・・・」 「本当になんでもないんです・・・すみません、ちょっとボーっとしてしまって・・・」 慌てて取り繕ってはみたものの、ネギ先生の訝しげな視線が解かれることはなくて。 「本当に大丈夫ですか?つらかったら、ちゃんと言ってくださいね・・・刹那さんは、すぐ無茶しそうだから」 心配そうに私を見上げる、その真摯な視線が・・・とても心苦しくて。 「・・・すみません、ネギ先生・・・」 耐え切れず、思わず零れた言葉に・・・ネギ先生が首を傾げた。 「え?・・・どうして謝るんですか?」 「あ、いやっ・・・その・・・せっかくの、その・・・休日に時間をわざわざ合わせていただいたのに、ボーっとしちゃって、 も、申し訳ないです」 「・・・なんだ、そんなことですか」 そうなのだ。 今日は、互いに忙しい時間を合わせて・・・久しぶりに二人きりで過ごすことができる、貴重な時間。 無論、私自身も楽しみにしていた・・・それは、間違いない。 それなのに。 ・・・・・また、嘘をついてしまった。 ネギ先生の視線に耐えかねて、つい零れてしまった本音を言い繕うために。 確かに、ボーっとしていることも申し訳ないと思うけど・・・それ以上に後ろめたい気持ちが、私の中には常々、 渦巻いていて。 ネギ先生が、真っ直ぐに見つめてくれればくれるほど。 ネギ先生が、その想いを伝えてくれればくれるほど。 ―――――私は・・・どうしたらいいのか、わからなくなってしまうから。 「そんなこと、気にしなくていいんですよ。刹那さんがこうして僕と一緒にいてくれるだけで・・・僕はシアワセなんです」 ・・・すみません、すみません・・・・ネギ先生。 私の大好きな、全てを包み込むような温かな笑顔で・・・そう伝えてくれるネギ先生に。 私は・・・心の中でただ・・・謝罪の言葉を繰り返すことしか、出来なくて。 「だから、そんなこと・・・・って!!せ、刹那さん、ど、ど、どーして泣いてるんですかっ?!」 「・・・・・え?」 突然、目の前で慌てふためきだしたネギ先生の言葉で、私は、初めて自分が泣いていることに気づく。 ゆるゆると、頬に手を伸ばせば・・・指先に触れる、生温かい感触。 ・・・・・私、泣いてるんだ・・・。 「ぼ、僕、何か気に障ること、言っちゃいましたかっ?!そ、それとも、そんなに具合が悪かったですかっ?!」 尚も目の前で、オロオロという言葉がぴったりなくらいに必死なネギ先生の姿に、私はそっと瞳を伏せて。 「・・・いいえ、違うんです・・・ネギ先生」 心を決めると・・・ゆっくりと、瞳を開く。 真っ先に視界に映るのは・・・大好きな、大切なネギ先生の姿。 「私・・・ずっと、先生に申し訳がなくて・・・」 「どうして・・・?」 「私は・・・ネギ先生が・・・好き、です。その気持ちに、嘘も迷いも・・・ありません」 一度は、手放そうとした。 諦めようとしたネギ先生へのその想いを・・・やっぱり捨て去ることは、出来なくて。 ネギ先生は・・・こんな私の全てを、受け入れてくれた。 それでも私は・・・・。 「でも・・・でも、私は・・・ネギ先生か・・・このかお嬢様、どちらかを選べと言われたら・・・・・」 どんなに、愛していようとも。 どんなに、大切な人であろうとも。 私は・・・お嬢様を・・・このちゃんを振り切ってまで、ネギ先生についてくことがなど、出来ない。 比べられる存在でないことも、分かってる。 そもそも、比べること自体、間違っていることも。 それでも・・・考えずには、いられない。 私にとって、ネギ先生も・・・お嬢様も、かけがえのない大切な存在だからこそ。 ―――――いつかくるかもしれない、その時のことを。 「・・・・・私は、お嬢様を・・・護ります。喩えそれで・・・ネギ先生を、失うことになっても、です・・・」 視線を逸らして告げるのは、卑怯な気がしたから。 真っ直ぐに、ネギ先生だけを直視して、私ははっきりと告げた。 いつも私に、数え切れないほどのシアワセな気持ちをくれるネギ先生に・・・こんな言葉しか返せないことが、 悔しくて・・・居た堪れなくて。 「・・・すみませ」 「・・・・・それで、いいんですよ」 耐え切れず、口にした謝罪の言葉を、ネギ先生の柔らかな声が遮った。 「え・・・?」 「それでいいんですよ・・・それでこそ、僕の大好きな刹那さん、なんですから」 ふんわりと、笑顔を浮かべて。 私は、ネギ先生の言葉が信じられなくて・・・ただ、息を呑んで見つめることしか、出来なかった。 「僕は・・・いつだって真っ直ぐな刹那さんが、大好きです。いつも自分の気持ちに真摯に向き合って、 その信念を貫く刹那さんが・・・大好きなんです」 ネギ先生が、そっと私の肩を抱いて・・・そう耳元で囁く。 それはまるで、根雪を溶かす春の日差しのように。 やんわりと私の心の奥底へと・・・染み入ってきて。 「だから・・・これからも、刹那さんの気持ちを・・・信念を、曲げないでください。今のままの刹那さんで ・・・いてください」 ―――――あぁ、本当に敵わない・・・この人には。 まだこんなに、幼いのに。 それでも・・・必死にその両手を広げて、私の全てを受け入れてくれる。 そんなネギ先生に、私が返せるものは・・・何一つ、ありはしないのに。 「でも・・・!」 「僕がそれでいいんですから、いいんですよ・・・あ、でももし、刹那さんの邪魔になるようでしたら・・・・」 「そんなことないですっ!あるわけないじゃないですかっ!」 思わず飛び出した・・・自分でも驚くほどの、大きな声。 だって、引き止めないと本当に・・・ネギ先生が、離れていってしまいそうな気がしたから。 何も返せない。 ネギ先生だけを、選べない。 そこまで分かっていても・・・それでも、失うことには臆病な・・・醜くて、浅ましい自分。 「そうですか・・・よかった・・・・・出来るだけ、出来るだけでいいので、傍にいさせてくださいね、刹那さん」 そんな私の醜い心までも浄化してくれるような、ネギ先生の眩しい笑顔に、私は初めて、思わず視線を逸らした。 「わ、私のほうこそ・・・こんな私でよければ・・・ぜ、是非」 「刹那さんだからいいんです・・・刹那さんじゃなきゃ、ダメなんですよ」 言葉と同時に、ぎゅっと抱きしめられて。 まだか細く幼い、その腕に・・・私は、そっと身を預けた。 ―――――ありがとうございます・・・ネギ先生。 今私にできる、精一杯の想いを込めて。 その幼い背に、そっと腕を廻した。 お久しぶりのせつネギSSをお届けしました。ヾ(;´▽`A`` お久しぶりすぎて、もう何だか二人とも別人な気がしますが・・・すみません。 前のSSはこのかと刹那の二人きりで、あんまりせつネギっぽくなかったので、 今回は、渡会なりに「せつネギらしさ」を目指してみました。 ・・・・「目指した」だけですが。_| ̄|○ 更新希望アンケートでもたくさん投票いただいてたので、頑張って更新したい! と思っていたCPなので、何とかお届けできてホッとしています。 へっぽこなりに頑張りましたので、ご感想などいただけると嬉しいです。 最後までお付き合いくださって、ありがとうございました! ブラウザを閉じてお戻りください。 |
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